本研究の目的は、量子系の物性計算を、専用計算機を作成してシミュレーションを行うことの是非を検討することである。古典粒子系の分子動力学計算では、専用計算機の方法がすでに大きな成功をおさめている。量子系の計算は古典系の計算に比べて格段に計算量が多いので、こうした方法が量子系の物性計算でも有効であれば非常に有用である。今年度は、強相関電子系などのモンテカルロ計算で重要な役割を果たす密行列の解法、対角化を専用計算機で高速に計算できるかどうかを中心に検討した。その結果、これらのシミュレーションは専用計算機で高速に行うことができることがわかった。 さらに、これらの目的のための計算機にどの程度汎用性を持たせられるかについて検討をおこなった。その結果、こうした用途に置いては、多数の演算器に同一のデータを供給し同一の演算をおこなう変形SIMD方式の演算装置で高速化できることがわかった。こうした演算装置は通常のマイクロプロセッサに比べて遥かに高い集積度・性能を得ることができ、そのため通常の並列計算に比べて10倍以上コストパフォーマンスが良い。また、汎用性を高めることによって量子系以外の計算も本計算機で高速に実行することができる。こうした準専用的な計算機は、今後の科学シミュレーションにとって非常に重要な意味を持つと考えられる。
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