自由度の大きな力学系において形成される空間的構造の力学的メカニズムについて研究した。系に作られる構造は永続的なものではなく、系はいくつかの構造の間を遍歴することもある。 1.1次元重力多体系での構造形成について 我々は今回、1次元重力多体系が巨視的に区別できる構造間を遷移する際につぎのようなプロセスを経る事が分かった。まず、系が準安定な構造を作って平均場中を振動する1体問題で近似できる期間があり、やがて、平均場ポテンシャル自身が振動し始め、これが粒子と共鳴を起こして巨大なエネルギーを持った粒子が出現して全体のエネルギー分布が変化する。このようにして遷移が起きることが初めて明らかになった。 2.高次元ハミルトン系の相空間構造と淀み運動について 力学系を扱う場合、実際に外に現れる変数の時間変化の様子と、相空間内の構造を関連させて考えることが本質的に重要である。しかし、低次元と異なり、高次元ハミルトン系の相空間構造には分かっていないことが多かった。今回我々は初めて高次元ハミルトン系の相空間構造をモデル化し、そこにおいても1/f揺らぎのような遅い緩和過程が生じることを明らかにした。 今回の科学研究費補助金で購入した備品は、以上の研究において非常に有効であった。特に、研究成果をまとめて発表するための資料作成にはコンピュータ本体が、計算過程にはソフトウェアが、計算機の安定した運動には無停電電源が大変役に立った。
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