研究概要 |
コレステリック液晶を垂直配向剤を塗布した2枚のガラス板に封入する。ガラス板の間隔を螺旋周期より僅かに大きくしておくと、液晶が自発的に螺旋を巻いてコレステリック(Ch)状態になる力が、配向剤が液晶をガラスに垂直に配向させてネマチック(N)状態を取らせる力より大きくなり、セルの全領域がCh状態になる。セルに十分強い電場を印加すると、液晶分子にガラス面に垂直に配向させる力が働きセル全体がN相になる。電場を減少させていくと、ある閾値でN相が準安定,Ch相が安定になり、フィンガー状のCh相の刻が生成し、そこから指状のドメイン(コレステリックフィンガーパターン)が成長する。この問題は、N-Chの相転移に関する結晶成長の問題と位置づけられる。ある電場のもとでは、指状のドメインが先端分岐を繰り返して成長する興味深い現象が観察できる。そこで本研究では、フィンガーパターンの成長の機構を解明する目的で、(1)先端分岐の過渡過程の解析,(2)一様な磁場の中でのフィンガーパターンの成長過程の解析を行った。 (1)フィンガー先端の形を画像解析によって抽出し、フィンガーの先端の曲率と横幅の時間変化を計測した。その結果、先端分岐が起こる前後では、先端の曲率は時間に比例して減少することが明らかになった。また、先端分岐が起こる直前まで横幅が時間に比例して増加することがわかった。 (2)磁場は液晶分子を磁場方向に配向させる力を及ぼす。磁場の強さを変えてフィンガーの成長を調べたところ、フィンガーの成長の形態も磁場によって変化することがわかった。この結果をもとに電場-磁場相図を作成した。また、ある磁場の環境では、磁場と垂直方向では先端分岐して成長し、平行方向では先端分岐が抑えられて先端がうねりながら成長する特徴的なパターンが観察された。
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