2枚の磁場中2次元電子系の間にトンネル電流を流す実験によると、磁場中2次元電子系のスペクトル関数は、その系が量子ホール効果を示すかどうかにかかわらず、フェルミエネルギー付近で大きく落ち込んでいると考えられる。量子ホール効果を示す系の場合はフェルミエネルギー付近に有限のギャップが開くということはよく知られているが、問題は量子ホール効果を示さない系でもスペクトル関数が大きく落ち込んでいるという点である。したがって、磁場中2次元電子系ではフェルミエネルギー付近でスペクトル関数が電子数に関わらず常にほとんどゼロになっていると考えられる。この問題に対し、これまで小さい系に対して厳密対角化の計算が行なわれたが、有限サイズ効果により系の形のとり方により結果が異なっていた。このためこれに代わる他の数値計算手法により、大きな系の性質を明らかにする必要性があった。 本研究では、厳密対角化に代わる数値計算手法として密度行列繰り込み群を磁場中2次元電子系に対して構築してきた。そして厳密対角化では到達し得なかった大きなサイズの系が計算できることが確かめられ、実際にスペクトル関数を計算したところ、電子数によらずフェルミレベル付近にギャップ(あるいは擬ギャップ)が認められた。厳密対角化の計算では、有限サイズ効果のために量子ホール効果を示さない電子数の時の擬ギャップの存在を結論づけることができなかったが、今回の計算により、その存在が確宝したと言ってよい。 さらに、本研究で用いた手法を応用すれば、磁場中2次元電子系の新たな性質を引き出すことも可能になると考えられ、現在もその方向の研究を進めている。
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