固体中の不規則ポテンシャルによる多重散乱で干渉が起こり、電子波が拡がったものから局在したものへと転移する、いわゆるアンダーソン転移は、電子波以外でもランダムな媒質中を運動する波動現象一般について、生ずると思われる。本研究では標題のランダム媒質中の光のアンダーソン転移について研究を行うことを目的としている。アンダーソン転移点付近での臨界現象は、全く異なる系でも同じ性質を示す普遍性をもっている。本年度はまず電子系のアンダーソン転移の臨界指数等を正確に決定し、これを光の場合と定量的に比較できるようにした。光の場合、吸収・放出が存在するので複素数のランダムポテンシャル中の局在の様子が問題となる。本年度は対角化、転送行列法等により複素数のポテンシャルをもつハミルトニアンなど、一般に非エルミートなハミルトニアンで記述される系でのアンダーソン転移を調べた。また、光と同じような古典波として、結晶中のフォノンモードのアンダーソン転移も対角化と転送行列法で調べ、これが従来の電子波のアンダーソン転移と同じユニバーサリティクラスに属することを示した。
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