研究概要 |
Heiko Rieger(HLRZ,Julich)と共同で,2次元の±Jイジングモデルに関して、基底状態における相転移を調べた.ボンド分布が非対称な場合,その非対称性の強さの関数として,スピンstiffnessと磁化とを計算し,有限サイズスケーリングによって,臨界指数を評価したところ,相関長の発散を特徴づける臨界指数νが2次元のパーコレーション転移のものと有効数字2桁で,統計誤差の範囲内で一致する事が見いだされた.これは,この相転移がなんらかのクラスターのパーコレーション転移として理解できることを示唆している.この事実とドッロップレット描像とを組み合わせることによって,相転移近傍における動的性質が理解されると期待できるが,それについては,研究継続中である.これと平行して,2次元のランダムな横磁場イジングモデルについて,動的異常性である量子グリフィス異常性について調べた.これは,横磁場の強さが,自発磁化を破壊する臨界値をこえても,帯磁率などに異常が現る現象としてとらえられる.1次元系については,すでに詳細な研究がなされており,動的臨界指数が横磁場の強さの関数として,臨界値に近づくにつれて発散することなどが報告されている.今回始めて2次元系を調べた結果,有限温度での相図が確定し,さらに,動的臨界指数が1次元系と同様に発散していることが確かめられた.また,以上の研究の為には,低温で有効な数値計算法が必要であるが,原田(京大工),Matthias Troyer(東大物性研)と共同で,量子系のための,新しいクラスタアルゴリズムを開発し,その特性を調べた.この方法はランダム系に限らずその他の量子系にも広く適用することができ,一般的な価値がある.
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