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1998 年度 実績報告書

スピングラス系の臨界現象と動的相転移

研究課題

研究課題/領域番号 09740320
研究機関東京都立大学

研究代表者

川島 直輝  東京都立大学, 理学研究科, 助教授 (30242093)

キーワード統計力学 / 物性基礎論 / スピン系 / ランダム系 / 臨界現象 / スピングラス / 量子臨界現象 / くりこみ群
研究概要

我々は2次元ランダム横磁場イジングモデルの絶対零度における量子相転移についてモンテカルロ法を用いて研究した.このモデルは異常に遅い緩和を示す可能性のあるモデルとして,一般のスピングラス系やエイジングなどの現象とも深く関連している.まず,有限温度でさまざまな横磁場の値においてモンテカルロシミュレーションを行い,磁化の4次のモーメントと2次のモーメントの比であるビンダーパラメータを求めた.この結果各温度での臨界磁場の強さが決定され,有限温度相図を確定した.その外挿により絶対零度での臨界磁場の値が求められた.また,高磁場の非秩序相内では局所的緩和時間を求め,その分布関数の長時間領域で冪的なながい裾をもつことが分かった.これは1次元の場合と同様に,無秩序相のなかですら,動的な振舞に異常がある,すなわちグリフィス・マッコイ異常性があることを意味している.またこの振舞から,動的臨界指数を求めた.その結果,動的臨界指数は磁場の強さとともに変化し,絶対零度での臨界磁場に近付くにつれて発散することがわかった.さらに発散を特徴づける冪指数が1次元の場合と同じになることが示唆された.また,臨界点直上での2点相関関数の計算から,平均的相関が冪的に減衰するのに対して,特徴的相関はこれより速く,指数関数の肩に冪関数がのったいわゆるstretched exponentialの形で減衰することが分かった.通常の相転移においては,平均的相関と特徴的相関は等しくなるのにたいし,このように両者が定性的に大きく異なる振舞をするのはランダム系の特徴であると考えられる.以上の結果から,2次元ランダム横磁場イジングモデルの量子臨界現象は1次元のそれと似通っており,フィッシャーが実空間繰り込みの考え方に基づいて1次元系に対して展開した描像が実はかなり広範囲の現象を記述している可能性を示唆するものである.

  • 研究成果

    (3件)

すべて その他

すべて 文献書誌 (3件)

  • [文献書誌] Beat Ammon, H.G.Evertz, N.Kawashima, M.Troyer, B.Frischmuth: "Quantum Monte Carlo loop algorithm for the t-J model" Physical Review B. 58・8. 4304-4315 (1998)

  • [文献書誌] C.Pich, A.P.Young, H.Rieger, N.Kawashima: "Critical Behavior and Griffiths-McCoy Singularities in the Two-Dimensional Random Quantum Ising Ferromagnot" Physical Review Letters. 81・26. 5916-5919 (1998)

  • [文献書誌] H.Rieger, N.Kawashima: "Application of a continuous time cluster algorithm to the two-dimensional random quantum Ising ferromagnet" European Journal Physice. (発表予定).

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公開日: 1999-12-11   更新日: 2016-04-21  

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