水棲生物の遊泳、歩行の様式を理論計算と実際の系との比較から議論した。珊瑚礁域を含む浅い海洋では様々な遊泳、海底歩行の生物がみられる。我々はこれらの水棲生物をグラフィクスコンピューター中に3次元的に再構築し、簡単な流体力学、力学を導入した土で、それらの動きの様子を進化計算の枠組みを用いて求めた。 流体力学としては、体の一部分が動くと、その速度と逆向きに面の垂直の成分だけ、反作用が加わるという簡単なモデルを採用した。進化計算の枠組みは、多自由度のシステムにおいてあるコスト関数の近似最適解を得ることが知られており、かつ様々な解のバリエーションをもたらすことが知られている。本研究では、体節を動かす為のパラメーターのセットをまず乱数として与え、遊泳能力の高い個体を選択し変異を加え再び評価を行うということを繰り返し、運動性能の高い個体を求めた。 この計算の結果、解として様々な近似解が得られることがわかった。おおきなグループとしてはヒレにねじりを加えながら上下させるものと、ヒレ全体を使って漕ぐやり方である。我々の実際の観測によっても、これらの動きが実際に存在することが確認された。 また、歩行様式として、直線型の生物の長さが変わった場合と、足を使って歩く生物の歩行様式、運動能力について議論した。その結果、前進能力だけを比較すると、直線型の生物においては、体全体を回転させて前進するやり方が非常に速い歩行様式として出現することがわかった。 更に、これら体の構造が変わった時の運動能力の違いを、動物の体の形の進化と関連づけて、議論した。
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