研究概要 |
1990年代の計算固体物理学における最も画期的な出来事は、電子状態のオーダーN計算法の発展である。これらの計算法では、電子エネルギー、全エネルギー、力などを系の原子数Nに比例した計算量で計算できる。オーダーN計算法は、N^3の計算量が必要な対角化法では扱えなかった巨大な系の量子状態の計算を可能にし、計算固体物理学の適用範囲を各種の実用的問題にまで広げたのである。 本研究では、このような巨大な系の外場に対する応答を研究するために、時間依存シュレ-ディンガー方程式の数値解法[1]を用いて、線形応答関数のオーダーN計算法を2種類、開発した。1番めの計算法は、DC(ω=0)応答関数用の「粒子源法」[2]であり、アモルファス金属の伝導率の計算に応用されて大きな成果を生みつつある[3]。2番めの計算法は、射影されたランダムベクトル[4]を用いた、AC(ω≠0)応答関数用の「射影法」[5]である。「射影法」の有効性はSiナノ微結晶についての計算[6]を見れば明らかである。 [1]飯高、量子ダイナミクス入門(丸善、1994);T.Iitaka,PRE49,4684(1994). [2]T.Iitaka:Computing the real-time Green's Functions of large Hamiltonian matrices,in High Performance Computing in RIKEN 1995(ISSN-1342-3428),241(1996). [3]H.Tanaka:Phys.Rev.B57,2168(1998). [4]O.F.Sankey,D.A.Drabold,and A.Gibson:Phys.Rev.B50,1376(1994). [5]T.Iitaka et al.,PRE56,1222(1997);T.Iitaka,PRE56,7318(1997);T.Iitaka et al.,RIKEN Review No.17(1998). [6]S.Nomura et al.,PRB56,4348(1997).
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