研究概要 |
コロイド粒子の安定性を調べ速度論的な解析を行うためには、凝集過程の測定が不可欠である。この測定の一つに散乱光強度の変化から凝集過程を追跡した幾つかの報告があるが、これらはすべて大気圧下での測定である。一方、これまでに我々は高分子一コロイド系の一つである赤血球-血漿懸濁液では静水圧の付加により赤血球の凝集が著しく影響を受けることを見出した。本研究では前方散乱光強度の変化から高圧力下でも凝集過程が測定可能な装置を製作するとともに赤血球懸濁液を用い室温、大気圧下において評価した。 本装置は光源にHe-Neレーザー、受光部にはシリコンフォトダイオードを用いた。市販の分光光度計用のセルに試料と撹拌子を入れ、これを光学窓を持つ圧力容器にセットする。強磁力スターラーにより圧力容器内で試料を十分に撹拌できるのが大きな特徴である。試料はヘマトクリット2%の赤血球-自己血漿懸濁液およびコントロールとして赤血球-生理食塩水懸濁液を用い、1000rpmの強撹拌を一分間行った後、撹拌強度を750,300,100,0rpmと変えて0,1秒ごとに散乱光強度の変化を記録した。 凝集のない生理食塩水中では撹拌強度に依らず散乱光強度の変化は観測されなかった。一方、凝集のある血漿中では撹拌強度の減少とともに散乱光強度の変化は大きくなり、時間とともに指数関数的に増大した。しかし、撹拌を完全に停止(0rpm)してしまうと散乱光強度の変化はむしろ小さくなり、赤血球の沈降により時間とともに直線的に増加した。 以上のことから、凝集過程の測定には強撹拌の後、撹拌を完全に停止させるのではなく、100rpm程度の弱い撹拌を続ける方が良いことが分かった。今後は温度、さらには圧力を変えた熱を予定している。
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