本年度は、タイプII角度位相整合条件下において光学的パラメトリック過程で発生したパラメトリック光子対の2つの偏光成分の間の相関測定を行った。連続発振アルゴンガスレーザーからの波長454.5nmのレーザー光をLBO結晶に入射し、タイプII位相整合条件を満たすようレーザーの入射角を調整して波長909nmのパラメートリック光を発生させた。発生したパラメトリック光を、偏光ビームスプリッターを用いて互いに直交する直線偏光成分に分離して、2組のアバランシェフォトダイオードを用いた光子計数システムを用いてそれぞれの偏光成分の光子を検出した。一方の直線偏光(アイドラー光)の光検出パルスをトリガーにして、他方の直線偏光(シグナル光)の光検出パルス観測時刻の時間分布を測定することにより両者のコインシデンスを求めた。その結果、アイドラー光を検出したのと同時刻にシグナル光が集中して検出され、二つの直線偏光成分の検出という事象の間には量子力学的な相関が存在することがわかった。また、アイドラー光によるトリガー回数を一定に保ちながら、シグナル光のコインシデンス測定を100回程度繰り返して、コインシデンスの平均値と揺らぎを推定した。アイドラー光、シグナル光それぞれ単独で測定すると光強度が大きく揺らいでいるにも関わらず、上記のコインシデンスの揺らぎの推定値は、シグナル光の光子数の統計的変動にのみを考えた場合の揺らぎの大きさに一致している。これは、アイドラー・シグナル光の間の量子相関を利用して、シグナル側の入射光子数を確定することができることを表している。したがって、パラメトリック光子対を用いると、古典的な光源で入射光子数を推定する際に必ず混入する量子統計雑音を排除し、古典光源での限界を超えた偏光測定が可能であることがわかった。
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