今年度は、申請書に記載した項目のうち、特に以下の二項目について研究を行った。 1.実際に選択される比率の分布の決定メカニズムの解明 本研究で当初用いたモデルは決定論的であり、2クラスタ状態において選択される比率は初期条件によって一意的に決まる。したがって、比率の分布は初期条件の母集団の分布をどう与えるかという問題に帰着される。しかし素子の自由度が連続なので、初期条件の選び方は無限に存在することから、分布の決定の困難が予想されていた。そこで、ノイズを加えるという形でモデルを改良した。ノイズによって、安定状態間の遷移が有限確率で起こる。このときモデルは確率分布関数の時間発展を与え、任意の初期条件から出発しても分布は一意に決まる。しかし、ノイズに白色かつガウス型という単純な性質を仮定しても、得られる方程式は多変数非線形偏微分方程式であり、数値的にでさえ解くのが難しいことが判明。そこでまず、ノイズの大きさがゼロの極限での確率分布関数を決定するため、現在数値計算を続行中である。なお、実際にノイズ入りのモデルの数値計算によって得られる分布は、決定論的なモデルで初期条件の母集団を適当に選んだものと定性的に一致することが判明した。 2.動的素子間の相互作用が大域結合で近似できるための条件の解明 まず、準備段階として、動的素子の間に適当な相互作用を仮定したモデルを用いて、集団運動の統計的性質を数値計算によって調べ、秩序-無秩序の非平衡相転移があることを確認した。今後は、相互作用の形と転移の有無の関係を調査する予定である。
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