重力崩壊する天体の崩壊過程や最終状態を明らかにすることは、一般相対論における最も重要な理論的問題の1つである。また、5-10年後から開始予定の重力波直接検出計画においても、重力崩壊する天体は有力な重力波源の1つであるので、その崩壊過程に伴って放出される重力波の波形を正確に予言しておくことが求められている。 これらの問題を解き明かすには、一般相対論の基礎方程式であるアインシュタイン方程式を解く必要があるが、アインシュタイン方程式は大変複雑な方程式であるので、数値シミュレーションを行う以外解く方法がない。そこで本研究では、アインシュタイン方程式を近似なしに一般的な問題において解くことを目標にシミュレーションコードを開発し、おおよそ完成した。 本年度は、開発したコードを用いて主に2体問題に対するシミュレーションを行った。具体的には、2つの球対称天体を用意し、ケプラー速度を与えて合体させる、といったシミュレーションを数例行った。そして最終状態が、ブラックホールになるか、新たな天体が形成されるかを調べたり、また重力波の波形の解析を行った。2体が合体する様子をを完全に一般相対論的にシミュレーションした研究はこれまで世界において例が無く、12月にパリで行われた「19回一般相対論に関するテキサス会議」で発表したときには、同様な研究を行う研究者から注目を集めた。なお、シミュレーションで得られた結果は、論文にまとめて現在投稿中である。
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