前年度の研究に引き続き、光ファイバーグレーティングにおける、ソリトン現象の理論的研究を行った。ファイバーグレーティングでは誘電率をファイバー方向に周期的に変化させることによって、人工的に分散性を生み出す事を可能にしている。実際、位相マスク法などによる作成法も確立している。 グレーティング強度が強い場合は、基本波としていわゆるブロッホ波を扱わなくてはいけない。その変調が非線形シュレディンガー方程式に従うことが明らかになったのは前年度得た結果であった。一方グレーティング強度が弱い場合は従来から、カップルドモード(CM)方程式として知られる標準的なモデルで解析が行われた。ギャップソリトンはこの系からはじめて見出されることができた。しかしながら、このCM方程式はグレーティング強度の最低次の効果しか考慮に入れておらず、ブロッホ波理論とのつながりは未知である。 そこで本研究では、強度の2次の効果まで取り入れた理論を確立した。主な結果をまとめると以下の通りである。 1. 従来のCMに補正項を加えた一般的なCM方程式を導出した。 2. 適当な変数変換により上の方程式をハミルトニアン系に帰着することができた。 3. 定常解としてブライト型ソリトン、ダークホール、ブライトホールを見出すことに成功した。特に最初の解は、強グレーティング系におけるギャップソリトンに対応する。
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