研究概要 |
1. 14アミノ酸残基からなるハチ毒Mastoparan-X(MP-X)の室温燐光測定. MP-XはTrpを1つだけ持つペプチドであり,リン脂質のベシクル存在下でαヘリックス様の立体構造をとることがNMR測定により明らかにされている.今回はSDS存在下(100mM)と非存在下でMP-Xの燐光測定を行た.その結果,SDS存在下で時定数約30μ秒で減衰する燐光の検出に成功した.このことはMP-XとSDSミセルとの相互作用によって,Trp周辺の自由度が減少したことを示唆している.今後は燐光測定と同じ条件下でNMRを測定し,Trp近傍の立体構造と燐光寿命の関係について研究する. (1998年10月,日本生物物理学会にて口頭発表) 2. 高等植物光化学系IIの水分解に関与する33kDaタンパク質の燐光測定. 33kDaタンパク質はチラコイド膜外面と光化学系IIの水分解系の間に位置して,系への水の供給に関与している.測定の結果,燐光寿命が約3msであることがわかった.今後,蛍光スペクトルを測定して,同タンパク質が光化学系内におかれている環境および状態を議論する. 3. HIVの粒子形成に関連したタンパク質(NCp8)の部分ペプチドの立体構造解析. アミノ酸29残基のペプチドの立体構造をNMRを用いて決定した.このペプチドは,14残基のzinc finger motifを1つ含んでおり,Zn^<2+>イオンの配位によって一定の立体構造を形成し,ウイルスRNAとの特異的な結合能を持つ.今後,燐光寿命を測定し,Trp周辺の構造ゆらぎについて研究する. (Kodera,Y.et al.(1998)Biochemistry37,17704-17713)
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