本研究では将来的な波形解析で必要になると考えられる100Hzまでの帯域で位相特性が平坦な地震計を開発することが目的である。当初の予定では初年度に試作機を1台、次年度に観測器を2台製作する予定であったが予算的な制限により初年度の試作機を諦め、観測器の1台を用いてテストすることにした。したがって本年度は使用する半導体レーザー(レーザーダイオード、LD)の性能評価に重点をおいて研究をおこなった。 LDは駆動電流や温度に応じて出力光強度や周波数・発振モードが変化する。LDを干渉光源に使用するためにはこれらの特性を把握して適正な条件のもとで動作させる必要がある。そこで、まずLDの特性を評価するためにLDの駆動電流と温度を変化させてそのときの光強度をモニターした。駆動電流はLD用の汎用電源を利用し、温度制御はコリメートレンズ付きのレーザーマウントを設計・製作し、0.1mA以下の電流制御、0.1K以下の温度制御がそれぞれ可能であることを確認した。駆動電流を46mAから54mA、温度を0度から22度にそれぞれ変化させたところ、4〜6度の場合には駆動電流に応じて光強度の減少が見られた。これはLDの発振モードホップに対応していると考えられ、この条件では干渉計が不安定になる。この条件を避けて、しかも温度変動による強度変動が比較的小さいものとして、駆動電流50mA、温度15度の動作条件に決定した。この動作条件のLDを用いて試験的にMichelson干渉計を光学台上に組み上げ、干渉信号から地面振動を検出した。干渉度が97.7%に達し、干渉計として十分に動作可能なことを示した。振動スペクトルから得られた検出限界はほぼ原理的限界であるshot noiseレベルであったが、1.5倍程度の不一致がみられた。これについては引き続き原因を究明していく。 次年度はこの干渉計を実際に地震計の変位センサーとして適用する予定である。
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