本研究では将来的な精密波形解析で必要になると考えられる100Hzまでの帯域で位相特性が平坦な地震計を開発することが目的である。初年度は使用する半導体レーザー(レーザーダイオード、LD)の性能評価に重点をおいて研究をおこない、モードホップにかからずしかも温度変動に対する強度変動が比較的小さい条件として、駆動電流50mA、温度15度の動作条件を決定した。また、LDのスペクトル広がりによるノイズは干渉計の対称性を0.1mm程度に合わせればショットノイズ限界の検出感度まで低減できることがわかった。 最終年度である本年度は地震計の振り子部分と制御部分の開発に重点を置き、プロトタイプの製作を行った。振り子は垂直成分を分離良く検出するために、片持ちのバネ振り子の構成を採用した。おもりの部分にプリズムを接着して振り子の動きを干渉計で精度良く計測する。数kHzまでの高周波まで制御をかけるために振り子の機械共振が十分に高くなるよう極力小型化した。また、長周期地震波も感度良く検出するために、補助バネで負のポテンシャルを作り振り子の固有周期をのばす方式を考案した。これにより振り子の共振周波数をもとの2Hzの1/10以下まで下げることができた。調整によってはさらに下げることが可能である。 制御部分については振り子の動きをレーザー干渉計で読みとり、3kHz以上の周波数帯域でフィードバックして地震計として動作させることができた。この制御帯域では100Hzでの位相遅れは0.3度以下であり、所期の位相精度が達成できる見通しが立った。 現在試験観測へ向けて実機を製作中であり、名古屋大犬山観測所において精密制御震源の信号の観測や微小地震の相関観測を行い、位相精度などの性能を評価する。
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