研究概要 |
ランドサット5号によって1991年10月から1992年11月の間に撮影された8シーンのTM夜間画像用いて,雲仙phase1の噴気活動の熱観測を行った.この間,噴気活動と溶岩の湧き出しが数100メートル離れた場所で起きていたため,溶岩湧き出し域からの影響を受けることなく,噴気域の熱観測を行うことができた.ランドサットTMデータにより,噴霧域から放出される熱輝度の総計を求め,これと地上観測および空中写真観察に基づいて求められているマグマ供給率と比較した.この結果,噴気域からの熱輝度の時間変化は単調減少傾向を示し,マグマ供給率と似た時間変化パターンを示すことがわかった.両者の間の相関計数は0.8と比較的高い正の相関関数が認められた.雲仙では噴霧活動の間,放出されているガスの温度は変化していないと考えられていることから,噴気域からの熱輝度は噴気として放出されるガスの量を反映していると考えられる.また,火山ガスの組成の検討から,ガスは基本的に噴火に関与しているマグマからもたらされていたことが明らかになっている.これらの事実は,供給されたマグマに見合った分だけ,そこからガスが放出されるという状況が続いていたことを示す.すなわち,ガスはマグマ内部あるいは山体の一部に蓄積されることなく効率的に放出されていた-脱ガスの効率が高かった-と考えられる。これは,この間,雲仙では爆発的な噴火が起きていないという事実とも調和的である.
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