1.スラブ深部の主要鉱物であるオリビン(α)、変形スピネル(β)、スピネル(γ)、ペロブスカイト(Pv)+マグネショウスタイト(Mw)の常圧での熱膨張係数の温度依存性の実験データをコンパイルし、各相の非圧縮率を連続する温度(500-2000 K)・圧力(10-30 GPa)の関数としてダイアグラムに図示した。これを用いて、Birch-Murnaghanの状態方程式を数値的に解き、高温高圧下での各相の密度もダイアグラム化した。剛性率・ポワソン比・熱膨張係数についても同様に連続的な温度・圧力の関数として図示し、各相に対する各種物性パラメターの温度・圧力依存性の概略を把握した。 2.鉱物物理学の研究成果を用いて700°Cを仮定したα→β、β→γの相転移のカイネティクス線とγ→Pv+Mwの相転移線を1.の温度-圧力ダイアグラム上で描き、各相の存在しうる温度・圧力範囲を特定した。これに基づき、1.の各相の密度や各種弾性率をそれぞれ1つの温度-圧力ダイアグラム上に描いた。二相以上が共存する領域では相転移の程度に応じて各物性パラメターの値を求め、相転移のカイネティクスを考慮した任意の温度・圧力での密度と各種弾性率を求めた。 3.断熱圧縮による温度上昇、摩擦熱、蛇紋岩の脱水反応による温度低下、放射性元素の壊変による温度上昇とオリビンの相転移に伴う発熱・吸熱反応による温度変化を熱源とする熱伝導方程式を2次元差分法によって解き、トンガスラブの幾何学的パラメターに対するスラブ内の現実的な温度分布を計算するとともに、スラブ内のα→β、β→γ、γ→Pv+Mwの相転移境界面の位置を求めた。
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