本研究費により購入した音響式体積計((有)計測科学研究所製VM-110)を用いて、南極氷床で採取された雪氷コアの雪から氷へ遷移する過程を詳細に調べた。これらの雪氷コアは、南極地域観測隊が採取したものである。南極氷床では、雪から氷への遷移は毎年降り積もる雪の自重を駆動力として、氷床内部30〜120m深でゆっくり起こっている。この「雪-氷遷移層」の深さは、その地点の年間平均気温や涵養速度に依存していることがこれまで明らかにされているが、本研究では、以下のことを新たに明らかにした。つまり、年間平均気温が高い地点では、「雪-氷遷移層」が浅く、また形成される気泡は数が少なく、一つ一つの気泡体積(単位質量あたり)が大きいことがわかった。一方、年間平均気温が低い地点では、「雪-氷遷移層」が深く、形成される気泡は数が多く、一つ一つの気泡体積は小さいことがわかった。これは、氷床表面での降雪の結晶形や堆積後の積雪の変態過程に依存していると思われるが、原因は不明である。今後、さらに測定するコア試料を増やし、極地氷床における気泡形成メカニズムを明らかにする予定である。
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