研究概要 |
本研究の目的は,アモルファス氷星間塵上での水素分子生成機構の解明である。今年度はそのうち,実験室でのアモルファス氷の再現,水素原子線源の試作,およびアモルファス氷上への紫外線入射による水素分子生成の確認を行った。 1.アモルファス氷の作製:真空槽内に残存する水や水素不純物と実験試料との区別をするため,アモルファス氷の原料として重水を採用した。重水蒸気を真空中(10^<-9>Torr)の冷却基板(10Kくらい)に吹き付け,赤外分光計により純度90%以上のD_2Oアモルファス氷の生成を確認した。赤外吸収線の形状から,生成したアモルファス氷は氷星間塵で観測されているものとほぼ同等であると判断した。 2.水素原子の線源の試作:アモルファス氷への水素原子入射による水素分子生成過程を調べらため,熱解離型水素原子線源を試作した。四重極質量分析器により,水素分子の解離を確認した。 3.紫外線入射による水素分子生成過程:アモルファス氷へ紫外線を照射し,氷試料の変化を赤外分光計で調べた。照射後,試料氷を昇温し,脱離してきた分子種を飛行時間型質量分析器および四重極質量分析器で質量分析した。その結果,紫外線照射によっても有意な量の重水素分子が生成されることが分かった。同時に,生成した重水素分子の氷からの脱離メカニズムに関する知見を得た。また,重水素分子生成量の紫線照射時間,波長依存性を調べ,生成反応経路や生成速度に関する考察を行った。
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