研究概要 |
本研究では,長崎県北松浦郡小佐々町〜鹿町町の海岸線において,前期〜前中期中新世(1,800万から1,500万年前)の地層である,野島層群の中下部層(大屋層と深月層)の地質調査を行い,大屋層と深月層の堆積環境の解釈と磁気層序による年代決定のための磁気測定を行った. 1.大屋層と深月層の堆積環境:大屋層と深月層は主に砂岩泥岩互層と厚い砂岩層からなり,砂岩泥岩互層は湖底堆積物,厚い砂岩層は湖に流れ込む河川〜河口三角州の堆積物と解釈することができた.大屋層の下部は湖底相の砂岩泥岩互層が優勢で,上部は河川〜河口三角州の砂岩層が優勢である。深月層は全体を通して湖底相と河川〜河口三角州の繰り返しからなる.これまで,野島層群は河川の堆積物からなるとされていたが,大屋層と深月層においては典型的な河川流路堆積物は少なく,湖底と湖に流れ込む河口三角州の堆積物が優勢であることが明らかになった. 2.大屋層と深月層の磁気層序:大屋層からの8地点,深月層からの17地点からの岩石試料を採取し,それらの磁気測定を行った.得られた測定データを解析した結果,大屋層の全ての地点と深月層下部の14地点で正磁極,深月層中部の3地点で逆磁極が得られた. 3.次年度の研究計画:次年度は大屋層と深月層における河川〜河口三角州の頻度を詳しく解析するとともに,本年度に行えなかった深月層上部について磁気測定を行い,大屋層と深月層の年代を磁気層序により決定する.その上で,河川流路の移動に伴う河口三角州の堆積時期と前期〜前中期中新世の海水準変動との関係を明らかにする.
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