西オーストラリア、ピルバラ地塊、ノースポール地域から採集した約3000個の緑色岩試料の顕微鏡観察を行い、花崗岩類によって接触変成作用を被っていないことが明らかになった調査地域南部の約650個の試料について岩石学的解析を行い、約35億年前に付加した海洋地殻における海洋底変成作用の特徴を明らかにして太古代における熱水循環を調べた。 調査地域の緑色岩類は弱〜強変質している。変質のタイプは、炭酸塩化タイプ、珪化タイプ、緑泥石化タイプ、および非変質タイプに分けられ、それらの試料の空間分布から熱水の循環パターンに傾向が見られた。全体の変成度はプレーナイト-パンペリ-石相から緑色片岩相を経て、角閃岩相にいたる。各ユニットの内部で各々南から北へ、つまり層序的上部から下部へと変成度が上昇している。各ユニットにおける鉱物帯境界線は初生的層理面と平行であることから、付加以降の広域変成作用あるいは花崗岩類による接触変成作用によるものではなく、付加前に各ユニットが被っていた海洋底変成作用の結果を保存しているものと考えられる。 本研究から、太古代の海洋底変成作用は中央海嶺では炭酸ガス分圧が高い条件下で、プルームでは水の分圧が高い条件下で起きたことが明らかになった。さらに顕微鏡観察によるデータ、及び固溶体組成の分析データを蓄積し、太古代中央海嶺深部での熱水循環による変成作用の特徴を明らかにし、さらに角閃石の微量元素組成の分析を行い当時の海水の組成を明らかにする。
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