月の重力場モデルLun60dとGLGM-2についての自己相関の評価、並びに地形モデルGLTM-2Bとの比較を行った。第一に、月重力ポテンシャルモデルの自己相関関数を計算したところ、Lun60dモデルは重力場の次数5-40の間で深さ64kmでの、GLGM-2については深さ100kmでのランダムな水平密度成層と調和的であるという結果が得られた。前者は月地殻の平均的な深さに対応していると考えられるが、後者については、アポロの地震波速度構造モデルでは対応する密度成層が見あたらないので、物理的意味が定かではない。 第二に、重力モデルと地形モデルの次数分散の比較を行った。Lun60dモデルは、地形による重力乱れ、あるいは地形についてエアリ-アイソスタシ-が成立していると仮定した場合のモホ面の起伏により生じる重力乱れの次数分散とほぼ一致した。一方、GLGM-2については、次数が高くなるほど差が大きくなり、最大で2桁以上の相違が認められた。 第三に、重力モデルと地形モデルの相関係数とアドミッタンスを計算した。Lun60d、GLGM-2ともに相関はほとんど得られず、アドミッタンスからも月の地形を支えるアイソスタシ-のメカニズムは見つからなかった。 第一、第二の結果から、Lun60dの方が物理的に意味のある重力モデルであると予想されたが、第三の結果はこの予測に矛盾するものであった。この矛盾については、まだ十分な解釈がなされていない。現在、月のマスコンの影響や月裏側の重力データの欠落が上の結果にどのように影響しているかを検討中である。
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