研究概要 |
ペルム紀前/中期境界付近で,パンサラッサ区からテチス東縁部の熱帯浅海域では,石灰藻・Palaeoaplysinaで代表される生物礁から石灰海綿・コケ虫礁への変遷が生じたことが知られている.今年度は,本邦ペルム系の中でとくに浅海成石灰岩の発達の良い,南部北上帯と美濃・丹波帯に分布するペルム紀中期石灰海綿礁の特性を,生物絶滅事変やトリアス紀生物礁との関連性を探ることから検討した.さらに,生物礁構成要素の中でも従来報告がなかった六射サンゴ類を取り上げ,それらが中生代六射サンゴの創始者か進化上の試作品かという問題を設定することによって,それらの進化学的な検討を行なった.前者に関しては,1)生物礁は,世界的な規模で衰退・絶滅現象が生じたペルム紀中期以降,量的な大衰退が生じ,ペルム紀後期の生物礁は,中期の生き残り群で特徴づけられること,2)生物礁の機能的ユニットは,ペルム紀中期以降ペルム紀最末期まで質的には変化しなかったこと,3)ペルム紀末の絶滅現象は,生物礁構成要素や生物間相互作用の組み替えに大きな役割を果したことが明確になった.後者に関しては,ペルム紀六射サンゴ様の生物は,トリアス紀以降出現すると考えられていた六射ザンゴの創始者であり,時代的に繰り返し生じた進化上の試作品(模倣物)ではないことが明らかになった.これらの結果は,パンサラッサ区からテチス東縁部におけるペルム/トリアス紀境界前後での環境変遷や生物礁の地史的変遷を明らかにする上で極めて重要な束縛条件であると考えられる.
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