地球中心核は溶融状態の鉄ニッケル合金と酸素・硫黄などの軽元素からなると考えられている。鉄-軽元素系融体の密度・粘性・電気伝導度などの物性値は核における磁場の発生などの物理現象や、地球形成初期の核マントル分離過程などを明らかにする上で非常に重要な情報である。これらの物性値は温度圧力の関数であるとともに、化学結合性・結晶構造にと密接な関連がある。しかるに、鉄-軽元素系融体の構造に関する知見はほとんど無いに等しい。本研究では放射光を用いた高温高圧X線回析実験から高圧下におけるFe-FeS系融体の静的構造を明らかにすることを試みている。今年度は端成分のひとつであるFeSのX線構造解析を約5GPaまでの圧力で行った。実験は物質構造研究所に設置されている高温高圧X線回析装置MAX90により白色光を用いたエネルギー分散法で行った。X線回析実験からFeS融体の干渉関数Qi(Q)が得られる。Qi(Q)をフーリエ解析することによって動径分布関数を導いた。動径分布関数からFeSの最近接配位数は約6、最近接原子間距離は約2.4Åであること、どちらも圧力依存性は小さいことが明らかになった。また、デバイ方程式を用いた干渉関数精密化法により、Fe-S間の部分相関を調べた。その結果、最近接イオン対はFe-Sであり、第2近接イオン対はFe-Fe、第3近接イオン対はS-Sであることが明らかになった。
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