含水変型スピネル及びスピネル相の状態方程式

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09740397
• 研究機関: 愛媛大学
• 研究代表者: 井上 徹 愛媛大学, 理学部, 助手 (00291500)
• キーワード: 高圧含水相 / hydrous wadsleyite / hydrous ringwoodite / 状態方程式 / 体積弾性率 / その場観察実験 / 高圧X線回折

研究概要

本年度はhydrous β-phase(wadsleyite)及びhydrous γ-phase(ringwoodite)の合成に力を注ぎ、その合成条件を決定した。そして、hydrous β-phaseには約3wt%のH_2Oが、hydrous γ-phaseには約2wt%のH_2Oが結晶構造中に含まれることを2次イオン質量分析計により確かめた。そして、この相を使って、各種の物性測定を行った。その1つはダイヤモンドアンビルを使ったhydrous β-phaseの圧縮率の測定であり、体積弾性率が155±2GPaであることを決定し、これは無水のβ-phaseより約7〜11%程小さいことを見いだした(Yusa and Inoue,1997)。さらにhydrous γ-phaseの単結晶を合成し、ブリルアン散乱法により弾性定数を決定した。その結果、体積弾性率は155±4GPa,剛性率は107±3GPaと求まり、この値は無水のγ-phaseよりそれぞれ16%,11%小さいことを見いだした。この結果は現在、Earth and Planetary Science Lettersに投稿中である。また、各種オリビンの高圧多形のレオロジーをニューヨーク州立大学ストニ-ブルックのグループと一緒に、無水系含水系で決定した。手法は高圧下でのX線回折パターンの半値幅から高温高圧下でのyield strengthを決定するものであり、オリビンのwater weakingの現象を捉えた(Chen,Inoue,Weidner,Wu and Vaughan,1998)。
さらに、放射光を使ったその場観察実験による状態方程式の決定の準備段階としては、西播磨に新しく建設された放射光施設SPring-8に建設グループの段階から出向き、最初に建設グループとして、ポストスピネル転移の放射光その場観察実験を行った。この結果はScience誌に掲載される。このように今年度の放射光を使ったその場観察実験に向けて、着実に計画は遂行されている。

研究成果

• [文献書誌] YUSA,H. and INOUE,T.: "Compressibzlity of hydrous wadsleyite(β-phase)in Mg_2SiO_4 by high pressure x-ray diffraction" Geophysical Research Letters. 24. 1831-1834 (1997)
• [文献書誌] LIU,I-G., MERNAGH,T.P., LIN,c-e. XU,J-A and INOUE,T.: "Roman spectra of hydrous β-Mg_2SiO_4 at Uarious pressurer and temperatires" High Pressure-Temperature Research:Properties of Earth and Planetary Materials,AGU. (印刷中).
• [文献書誌] CHEN,J., INOUE,T. WEIDNER,O.J., WU,Y., VAUGHAN,M.T.: "Strength and water weaking of mantle minerals,divine,wadsleyite and ringwoodite" Geophysical Research Letters. 25. 575-578 (1998)
• [文献書誌] 井上徹: "マントル物質の相平衡及び鉱物物性に対するH_2Oの影響" 鉱物学雑誌. (印刷中).
• [文献書誌] INOUE,T.: "The effect of water in the Earth mantle materials" Proc.5th NIRIM International Symposium on Advanced Materials. (印刷中).
• [文献書誌] IRIFUNE,T., NISHIYAMA,N. KURODA,K., INOUE,T.他7名: "The post spinel phase boundary in Mg_2SiO_4 determired by in situ x-ray diffraction" Science. (印刷中).