研究概要 |
平成9年度は河川水中の陸起源物質の中でも光ルミネッセンス能を有する蛍光物質に着目し、3次元励起蛍光スペクトル法により分布挙動、解析を行った。 1.淀川水系:琵琶湖を起点とする淀川水系においては溶存有機炭素(DOC)は季節変動が認められ、また琵琶湖から大阪湾にかけて徐々に増大する傾向が認められた。一方、蛍光物質については3つのピーク(Peak A:Ex.230nm/Em.350nm,Peak B:Ex.280/Em.350,Peak C:Ex.340/Em.440)の存在が認められ、それぞれの相対蛍光強度とDOC濃度の間には高い正の相関関係が認められた。この蛍光の励起蛍光波長からある程度構成成分の推定が可能である。すなわちこれまで報告されている腐植物質、タンパク質等の物質と今回の結果を比較した。その結果Peak Aはタンパク質様、Peak B,Cはフルボ酸様物質に由来している可能性が高いことが示唆された。 2.大和川水系:この水域におけるDOC濃度は相対的に高く(平均51.2μMC)、また蛍光物質については淀川同様3つのPeak A,B,Cが認められた。しかし、相対蛍光強度は淀川に比べ高く(約4.6倍)、DOCとの濃度相関性に関してはr=0.316と低く、この河川の特徴、すなわち人為的な蛍光、無蛍光性有機物質の科学成分の搬入の結果と考えられる。 3.会津川水系:会津川は人為的汚染の少ない河川である。この河川のDOC濃度は比較的低濃度であり、平均40μMCであった。また蛍光物質については淀川、大和川同様に3つのピークが認められたが、その相対蛍光強度は低く、淀川の平均値の約1/7であった。この相対蛍光強度とDOC濃度の上流から下流にかけての分布傾向は大変似通っており、高い正の相関関係が認められた。
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