研究概要 |
アオコ中の毒性物質ミクロシスチンLRの紫外吸収スペクトルと紫外線照射によるミクロシスチンLRの分解反応の研究を行った。その結果、250nmの紫外線照射によって、ミクロシスチンLRの238nmのピークが減少し、300nmに新しいピークが出現することを見いだした。紫外線照射によってミクロシスチンLRが分解していることを確かめるために、300nmのピークをもつ反応生成物のNMRスペクトルの測定を行った。その結果、ミクロシスチンの構造でAddaと呼ばれる部分のNMRスペクトルが消失することを確認した。さらに、ミクロシスチンLRのどの部分で反応性が高いのかを知るために分子軌道法によるミクロシスチンLRの電子状態計算を行った。ミクロシスチンLRのHOMOとLUMOはいずれもAddaの4,5,6番目の炭素によって形成される2つの二重結合におけるπ電子に局在化しており、この部分が反応を受けやすいことがわかった。また、ミクロシスチンLRの238nmのピークはAddaのπ軌道からπ軌道への励起スペクトルであることが計算結果よりわかった。次に、実際の環境で発生したアオコ中のミクロシスチンの定量を行うために、琵琶湖および諏訪湖で採取したアオコを含む湖水中のミクロシスチンの検出を行った。ミクロシスチンの定量はミクロシスチンのAddaを特異的に認識するモノクロナール抗体を利用した酵素連結イムノソルベント検定法(ELISA)を用いて行った。その結果、ミクロシスチンの濃度が最も高く検出されたのは諏訪湖のサンプルでその濃度は145.4ng/mlであった。また、琵琶湖湖水中のミクロシスチン濃度は、南湖(矢橋)で42.5ng/ml、南湖(北山田)で31.4ng/ml、北湖(長浜)で0.894ng/mlであった。
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