研究概要 |
(1)M@C_<82>(M=Ca,Sc,Y,La)の構造決定 いずれの金属もC_<82>のC_<2v>ケージに内包された構造が最安定になることを、理論計算により予測した。9つの安定なフラーレン異性体のうち、このケージは空フラーレンでは極めて不安定だが、内包金属からフラールンに電子が移動した状態と等しいアニオンフラーレンでは最安定となる。この構造は、ごく最近のSc@C_<82>のMEM法によるX線構造解析で確認され、安定な金属内包フラーレンが単離されていることがわかった。これらは、金属と炭素のかたまりが冷えていくアニーリングの生成過程で、安定なケージ構造に異性化することを示している。以上のことから、単離される安定な金属内包フラーレンの構造は、アニオンフラーレンの安定性から予測できることを提案した。 (2)Ca@C_<72>の構造決定 単離される空フラーレンは、互いに離れた五員環と六員環からできている(IPRフラーレン)。しかし、(1)は金属内包フラーレンの構造や異性体の安定性が必ずしも空フラーレンと一致しないことを示している。その一例として、空フラールンにはない新しいケージ構造をCa@C_<72>で見つけた。この構造は、IPRフラーレンよりも安定で、七員環や隣り合った五員環をもつ初めてのケージ構造である。
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