研究概要 |
平成9年度は主として金属の配位した炭素クラスター負イオンの光電子分光実験を行った。以前に行われた実験によれば、La,Y,Sc等の金属内包フラーレン類を生成し易い金属原子を含む金属-炭素混合ロッド(金属原子と炭素原子の原子数比1:130、実際に金属内包フラーレン類の生成に使用されているロッド)のレーザー蒸発法による質量スペクトルの結果からは、これらの金属原子は炭素クラスターにMC_n(M=La,Y,Sc)の形で結合し易いことが分かっている。そこで金属原子の配位した炭素クラスター負イオンMC_n^-(M=La,Y,Sc)を生成し、その光電子スペクトルを炭素原子の数nが5から20まで測定し、炭素クラスター負イオンのスペクトルと比較検討した。その結果、(1)炭素クラスター負イオンC_n^-(n≦9)については、光電子スペクトルの結果は直鎖状の構造異性体の存在のみを示しているのに対し、金属の配位した炭素クラスター負イオンの場合には、イオンの生成条件を変化させると、直鎖状以外の構造異性体によると考えられるスペクトル部分が出現する事、(2)スペクトルから求められる垂直電子親和力のサイズ依存性は、金属原子軌道から電子がいくつかπ電子軌道へ供給されると考えることにより定性的に理解できるとの知見を得た。
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