平成9年度に開発を行った階層的有限要素法を用いた解適合基底を一次元調和振動子系などの量子系に適用した。その結果、従来よく用いられてきた汎用基底である格子点法、次数固定の有限要素法等の方法に比較して解の表現に要する基底の数を大幅に節約できることが判明した。また一方で工学系の分野で脚光を浴びている移動最小二乗近似を用いた要素フリー・ガラーキン法を用いてー、二及び三次元の汎用基底系の開発を並行して行った。この方法を代表的な汎用基底である有限要素法と比較したところ、不等間隔な節点分布に対して顕著な精度の低下が見られない、節点に関数値を無理に束縛することがないため波動関数の滑らかさを損なわない等、波動関数を記述する基底として非常に優れていることが判明した。これらの性質は、計算精度を低下させずに自由に節点分布を制御することが出来るという点で解適合性を実現するための要求を満たしている。そこで、この要素フリー・ガラーキン法を用いることによって、すでに開発された階層的有限要素法を基礎とする解適合基底と相補的な関係にある解適合基底の構築が可能であると考え、一次元用の量子力学計算用の基底を開発した。その際、適合させる波動関数の零点及び停留点に各節点を配置することによって波動関数の形状を効果的に表現する事が可能になった。さらに開発された基底を用いて調和振動子、モース関数等の様々な一次元モデルポテンシャル上での振動状態の計算を行い、格子点法、有限要素法、DVR法などの従来法による結果との比較・検討を行ったところ、精度、解適合基底としての有効性が判明した。
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