多くの分子は約20eVより短波長の光で、いわゆる光イオン化解離を起こすことが知られている。光イオン化解離過程においては、光電子エネルギーとフラグメントの並進エネルギーの間だけではなく、電子の放出方向と分子の解離する結合軸方向をあわせた4つの物理量に相関がある。本研究の目的は2つの二次元画像を測定し、その2つの画像シグナル間のコインシデンスを測定することでこの4つの物理量の相関(ベクトル相関)決定を可能にすることにある。 実際の装置は分子線発生装置、イオン電子加速部、マイクロチャンネルプレート(MCP)とその後方に置かれる位置検出装置から構成される。昨年度開発した装置を改良し、サンプルとして窒素、オゾンうぃ使用してイオン化光解離実験を行った。ガス導入としては昨年と同様、スキマーによる分子線装置を用い、位置検装置としてはRoentdek社製のワイヤー型の位置検出装置を改良した。 実際に窒素分子を用い20-100eVのエネルギーのシンクロトン放射光を用い実験を行い、窒素イオンの画像観測を行った。昨年度はシンクロトロンリングからでる、RFノイズのため測定ができなかったが、今年度は画像を測定することに成功した。しかしながら、データ間のクロストークが多く解析できるデータは得られなかった。 一方、次の試料として予定しているオゾンの光解離実験も平行して行った。525-555eVの領域で光解離させたO^+、O^<2+>、O^+_2、O^+_3の各イオンを飛行時間法により選別した。解離の異方性、並進エネルギーを計算と比較することで求め、これらの値から含まれるダイナミクスを考察した。
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