研究概要 |
本年度は、自発ラマン分光装置と偏光CARS分光装置の基本的部分の作製、偏光CARS法の有効性に関する予備的なデータの測定を行った。 【自発ラマン分光装置】既存のレーザー、シングル分光器、光マルチチャンネル検出器を組み合わせたものを作製した。ソフトウェアを自作し基本的な測定が可能となった。作製した分光装置を使用し通常のラマンスペクトルを測定して性能を評価した結果、偏光測定に適した高感度な検出系が実現されていることが分かった。これはスループットの大きいシングル分光器とレーリー光カットフィルターを使用したことによる。偏光条件の切替えと同期した信号の取り込み部分は10年度に作製予定である。 【偏光CARS分光装置】既存の時間分解CARS測定装置を偏光測定に適するように改良した。その過程において、高い測定精度を得るために必要なレーザー光の偏光純度を保つ技術を習得した。(なお現在、偏光測定専用のCARS分光測定装置の作製も予定している。)この装置を用いて、いくつかの液体有機分子について偏光CARSの予備的な測定を行った。検光子の角度を変化させることにより,偏光解消度によって予想されるようにそれぞれのラマンバンドの強度が変化することを確認し、(1)強度の大きいバンドに隠れて観測することが困難だった微弱なバンドを、周囲のバンドを消去することによって選択的に観測、(2)自発ラマンでは困難な偏光解消度の小さいバンドの偏光解消度の測定などを行った。以上の測定により偏光CARS分光法および今回作製した測定装置がこの種の測定に有効であることを確認した。またこの過程において偏光CARS法によって得られるシグナル偏光の検光子依存性は、スペクトルの形状からは判断が困難なラマンバンドの不均一幅に関する上を得る手段としての可能性を持っていることを見出した。この点については有効な解析法などについてさらに検討していく予定である。
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