1. 偏光自発ラマン(1)マルチチャンネル光検出器からの信号取り込み、レーザー光の照射、検光子の角度の変更をパーソナルコンピューターから制御可能な測定システムを製作した。検光子の角度は自動回転ステージによって、レーザー光の照射は電磁シャッターによって制御している。このシステムにより、偏光条件を短時間に切り替えながら偏光ラマンスペクトルを測走することができるようになった。偏光条件の切替に要する時間は約1秒である。偏光条件の切替によって、レーザー(ラマンプローブレーザーと時間分解測定の場合過渡種生成のための励起レーザー)の揺らぎを良好に時間平均し精度の高い偏光解消度の測定が可能になった。(2)作成したシステムを用いて、シクロヘキサン中のナフタレン分子の最低励起三重項状態(T_1)の偏光ラマンスペクトルを測定し、ラマンバンドの偏光解消度を決定した。ナフタレンのT_1のラマンバンドの偏光解消度はこれまで報告がなかった。偏光解消度の値から、理論計算によって提案されていたラマンバンドの振動の帰属に誤りがあることが明かとなった。 2. 偏光CARS(1)昨年度作成した偏光CARS測定装置を用い、いくつかの液体有機分子について偏光CARSの測定を行った。検光子の角度を変化にともなうCARSバンドの強度とバンド形が変化を精度よく測定することにより、強度の大きいバンドに隠れて観測することが困難だった微弱なバンドの選択的観測、確度精度の高い偏光解消度の決定、自発ラマンスペクトルの形状からは判断が困難なラマンバンドの不均一幅に関する情報を得ること等が可能である事が分かった。(2)偏光CARS測定装置を時間分解測定に応用した。過渡種の信号強度が回転緩和の影響を受けない偏光配置を考案した。この配置において検光子の角度は、w_1光とw_2光の偏光方向と平行、過渡種を生成する励起光の偏光方向と約55度の角度、となっている。約100ピコ秒の回転緩和速度をもつジフェニルアセチレンの一重項励起状態について実際にこの配置で測定を行い、回転緩和の影響が取り除かれていることを確認した。
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