研究概要 |
近接した位置に複数個のヘテロ原子を有する化合物は、ヘテロ原子間に強い相互作用が存在することが知られている。これはヘテロ原子どうしの隣接基関与により、化学反応が加速されたり不安定化合物が安定化されたりする現象である。我々はこれまでこのヘテロ原子間相互作用に関する研究を継続して行ってきたが、本研究ではこれまでの研究に関連して、硫黄やセレン等のヘテロ原子間での相互作用が有機化合物の反応に対してどのような効果があるのかを検討した。その結果、ヘテロ原子間相互作用の強さが1,9-二置換ジベンゾチオフェン、1,9-二置換ジベンゾセレノフェン等の、脱硫、脱セレンを伴う熱分解反応および光分解反応に対して大きく影響することを明らかにすることができた。また、この分解反応によって得られたジベンゾ[bc,fg][1,4]ジチアペンタレン、置換トリフェニレノ[4,5-bcd]チオフェン誘導体等の新規な平面性化合物は、サイクリックボルタンメトリーを用いた電気化学的な研究により、電極表面上でポリチオフェンに類似した物質を生成することが明かとなった。ポリチオフェンは導電性材料として注目を集めている物質であるので、ジベンゾ[bc,fg][1,4]ジチアペンタレン、置換トリフェニレノ[4,5-bcd]チオフェン誘導体は、今後新規な導電性機能材料への応用が期待できるものと考えられる。以上の結果は、今後ヘテロ原子を有する機能性分子を設計し、合成し、実用化を進めていく上で重要な知見であると考えられる。また、これらの研究成果は下記の論文で報告した。
|