研究概要 |
1、光学活性チアザイン類の合成法について検討した。代表者等が蓄積したチアザイン合成法を基に光学活性スルフィルイミン類からの合成を検討したが、光学活性N-ハロスルフィルイミン類とフッ化物イオンとの反応で生成するフルオロチアザイン類は、硫黄-フッ素結合間に速い開裂-再結合の平衡が存在し、ラセミ化反応が進行することが分かった。代表者等が既に合成しているチアザイン類の中で、S,S-ジフェニル-S-アミノ及びS-アリル-チアザイン類は、酸との反応において、対応する酸塩を与え、更にこれらの酸塩をアルカリ処理することにより対応するチアザイン類に定量的に戻ることが分かっている。そこで、これらの性質を利用し、チアザインのラセミ体を合成し、得られたラセミ体と光学活性の酸(カンファースルホン酸)を用いて光学分割を行い、光学活性チアザイン類の合成を検討する。 2、光学活性チアザイン類の不斉脱プロトン化剤としての利用を目的とし、本年度は、高い塩基性を有するチアザインの設計、合成について検討した。代表者等が合成したチアザイン類のS≡N結合のN原子は、対応するスルフィルイミン類よりも高い塩基性を有しているが、このようなチアザイン類を脱プロトン化剤として利用するためには、より高い塩基性が要求される。そこで、共役酸が共鳴安定化するような置換基を選択し高い塩基性を有するチアザインの設計、合成を試みたところ、チアザインの置換基としてスルフィルイミノ基を導入したチアザイン類が、現在まで合成されているチアザイン類に比べ、10^2-10^4倍も高い塩基性を有することが分かった。
|