研究概要 |
1.本課題平成9年度においては、複数のビスマス原子を分子内に有する各種有機ビスマスオリゴマーの合成法を新たに開拓し、可視紫外吸収スペクトルの測定を指標として合成した化合物群の光学特性を検討した。 2.分子内に2個のビスマス原子を有するアリールビスムタンの合成法を確立する目的で、ジメタロベンゼンとジフェニルビスマスハライドとの反応を詳細に検討した結果、反応条件および用いる塩基をうまく組み合わせることにより、ビスマスを2、3、4個含むフェニレン架橋型ビスムタンオリゴマーがワンポットで同時に得られることを見いだした。得られた3価化合物は塩化スルフリルとの反応によりそれぞれ定量的に5価ビスマスポリハライドへと変換される。 3.スルホンアミド基のオルトリチオ化を利用した従来にないタイプのポリビスマス化合物合成法を確立した。すなわち、適当量の塩基をトリス(オルト-N,N-ジエチルスルファモイルフェニル)ビスムタンに作用させることにより、ビスマス原子を2〜4個を含む放射状ビスマスオリゴマーが好収率で得られた。本反応をさらに展開し、分子内にビスマス原子10個を含むビスマスデンドリマ-の合成および単離に初めて成功した。 4.得られた一連の化合物の可視吸収スペクトル測定の結果、3価、5価いずれの原子価においてもフェレニン架橋によるパイ電子の共役安定化はそれほど大きくないことが明かとなった。また、両原子価の間で吸収特性の顕著な変化は認められず、原子価異性によるスイッチ機能を発現するには置換基の修飾などの工夫が必要があると考えられる。
|