研究概要 |
1. 本課題平成10年度においては、複数のビスマス原子を分子内に有する有機ビスマス化合物の機能化をめざし、ひとつの展開として非イオン型水溶性ビスマス化合物を合成した。さらに、ビスマス原子上にキラリティを有するビスムチンおよびビスムトニウム化合物の合成法を確立し、キラルなビスマス化合物の基本的な物性を明らかにした。 2. 非イオン型水溶性ビスマス化合物は例えば造影剤や抗菌剤としての利用が期待されているが、これまでその合成例はなかった。芳香環にN,N-ビス(ヒドロキシエチル)アミノスルホニル基を有するトリアリールビスムチンを合成してその水溶性を調べた結果、オルトおよびパラ位に同官能基を持つビスムチンが中性条件下で高い水溶性を示すことが明かとなった。さらに、昨年度の本研究課題で確立した手法-スルホニル基のポリオルトリチオ化-を本系に適用して、上記官能基を有するフェニレン架橋型オリゴビスムチン(ビスマス原子;2〜4個)をワンポットで合成し、その水溶性について評価した。 3. ビスマス原子上のキラリティは学術的にも興味が持たれるが、今回、ビスマス上にキラリティを有する非対称テトラアリールビスムトニウム塩の合成法を確立した。オルト位にオキサゾリン置換基を有するビスムトニウム塩の場合、^1H-NMRではビスマス上のキラリティを反映したジアステレオトピックなシグナルが観測されるが、このシグナルをVT-NMRにより追跡することで、ビスマス上における立体化学的な挙動と対イオンや溶媒の極性との関係を明らかにした。
|