当初の研究計画にしたがって研究を行い、以下に示す結果を得た。 1.3個のビシクロ[2.2.2]オクテンの縮環したシレピン誘導体の合成 ビシクロ[2.2.2]オクテン(以下BCOと略記)の縮環したシレピン誘導体のうち、アルキルあるいはクロロ置換体はBCO3量体のジリチオ化物に対応するクロロシランを反応させることにより合成し、GPCにより単離した。さらにジクロロ置換体を出発原料として、メタノールおよびジンクフルオリドを反応させメトキシおよびフルオロ置換体を合成、単離した。 ジクロロ体については単結晶が得られX線結晶解析を行った。その結果ボード構造の折れ曲がり角は、以前測定したジメチル体とほぼ同様の値をとっていることがわかった。 2.シレピン誘導体の環反転障壁の測定と理論的検証 1.で合成した種々のシレピンについてNMRにより温度可変測定を行い、環反転運動の熱力学的な活性化パラメーターを求め、ケイ素上の置喚基がより電気陰性になるほど環反転障壁が減少することを見いだした。さらに半経験的および非経験的分子軌道計算を行い理論的に検証した。その結果この環反転障壁の減少は、遷移状態においてケイ素上に電気陰性基をもつシレピンが、シラトロピリウム的な芳香族安定化効果を受けて、活性化エネルギーを減少させているためと結論付けた。
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