研究概要 |
ペブチド結合加水分解反応を触媒するカルボキシペプチダーゼY(CPY)は,他のプロテアーゼによって加水分解されにくいプロリン(Pro)を含めたすべてのアミノ酸に隣接したアミド結合(Xaa-Pro;Xaa=amino acid)をC末端側から加水分解するセリンプロテアーゼである。ペプチド結合の加水分解の触媒抗体の作成を目的として,アミド結合の窒素原子上に水素原子をもたないProおよびサルコシン(Sar)を用い,水素原子の影響について検討した。基質は,ジペプチド(Z-Phe-Yaa;Yaa=Pro,Sar,Gly)を用い,それぞれの基質に対する加水分解速度パラメータを比較した。Yaa加水分解におけるKcat値は,Gly>Pro>Sar,kcat/Km値は,pro>Gly>Sarの順であった。これらのことから,ペプチド結合の窒素原子の水素原子をアルキル置換することによって四面体中間体がより安定化されることが示された。これは,アルキル基の誘起効果によってC-N結合の電子密度が上がり,結合開裂が起こりにくくなっていると考えられる。一方,CPYによるペプチド鎖加水分解におけるP2位アミノ酸の影響を検討した。トリペプチド基質(Z-Xaa-Gly-Pro;Xaa=Phe,Val,Ala,Leu,lle,Gly;Z=benzyloxycarbonyl)を用い,Xaaの違いによるPro加水分解における初速度を比較した。初速度は,Phe>lle>Val>Leu>Ala>Glyの順で,Pheにおける初速度は,Glyの約60倍であった。初速度とXaaの側鎖の疎水性との相関は,Leuとlleを除いて,直線関係が見られた。Leuとlleに相関が見られなかったのは,それぞれの側釘の立体障害と考えられた。これらのことから,CPYは活性部位においてGly-Pro結合だけでなく,P2位アミノ酸の側鎖の疎水性を認識していることが明らかとなった。
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