研究概要 |
核磁気共鳴(NMR)法を用いる蛋白質の構造解析に有用な安定同位体標識アミノ酸の合成研究の一環として、ピログルタミン酸誘導体をキラルテンプレートとするグルタミン酸、プロリンの合成を検討した。 9年度は合成の簡便さから4-ヒドロキシ-L-プロリンから誘導されるデヒドロプロリン1を出発物質とする合成経路を確立した。2の重水素添加は報告例がなくH-Dのスクランブリングが予想されるため高い位置・立体選択性を達成しうる遷移金属触媒の探索を行ったところRuCl_2(PPh_3)_3が最も有効であることが明らかとなった。得られた重水素標識プロリン誘導体2のδ位を酸化ルテニウムで酸化することにより鍵中間体である重水素標識ピログルタミン酸誘導体3を合成した。[3,4-^2H_2]グルタミン酸4は3の酸加水分解によって容易に得られ、400MHz-^1H NMRスペクトルおよびHPLCの結果からその立体化学は(2S,3S,4R)であることが確認された。 一方、プロリンのβおよびγ位の不斉重水素標識は化合物2の合成によって達成されているが、δ位の不斉重水素化によりプロリン環すべてのメチレンの不斉重水素標識が実現する。そこで重水素標識ピログルタミン酸誘導体3のアミドカルボニル基にLiBEt_3Hを作用させてアミノアルコールとした後、BF_3の存在下、Et_3GeDを用いて還元したところδ位を高立体選択的に重水素標識することが可能となった。この時、重水素化試薬の組み合わせによりδ位の立体化学は作り分けが可能であり(2S,3S,4R,5S)-および(2S,3S,4R,5R)-[3,4,5-^2H_3]プロリンの合成ルートを確立することができた。
|