高圧下において精密に回析図形を得るために、どの回析位置においてもまたどのようにアンビルセルが配置されてもつねに入射および回析X線の通過距離が等しくなるよう設計し、吸収補正を行うことなく精密な回析図形が得られる新しい高圧装置を開発することを目的とし、本年度は装置の試作ならびに性能テストを行った。 ピストンなどセル本体は平成7年度科学研究費にて購入したダイヤモンドアンビルセル(清水製作所製MKD-30)を使用した。アンビルとする半球形のサファイヤは市販の半径約5mmの球形のサファイヤを加工して作製した。キュレット面の直径は0.5mmとした。また、キュレット面から約15度のテーパー加工を行った。アンビル受け台はステンレススチールを用いサファイアアンビルとすりあわせ加工した。また、入射側受け台にはコーン状の、回析側受け台にはスリット状のX線通過用の窓をつけた。ガスケット材として、従来サファイアアンビルによく使用されている銅、およびりんせい銅を選択した。アンビル破損にいたるような高圧力発生は試みていないが、試料室用に開けた直径0.3mmの穴が0.2mm程度まで圧縮されるのを確認した。 性能テストとして試料室に何も入れない状態、およびSi粉末をサンプリングした状態でX線回析実験を行った。どちらも、吸収が回析位置で不変であるという本装置の特色をよくあらわす回析図形が得られた。しかし、吸収がダイヤモンドに比べ絶対的に大きいので精度の良いデータを得るためには測定時間を極端に大きくしなければならないことが判明した。
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