高圧下において精密に回折図形を得るために、どの回折位置においてもまたどのようにアンビルセルが配置されてもつねに入射および回折X線の通過距離が等しくなるよう設計し、吸収補正を行うことなく精密な回折図形が得られる新しい高圧装置を開発することを目的とし、本年度は昨年度試作した装置の性能テストを行った。 昨年度に引き続き性能テストとして試料室に何も入れない状態、および構造既知試料粉末をサンプリングした状態でX線回折実験を行った。吸収がダイヤモンドに比べに大きいので精度の良いデータを得るためには測定時間を極端に大きくしなければならないことが判明し、結晶度の低い試料については実験室規模のX線発生装置では実用的でないことがわかった。本装置の特質を利用するためには回折強度の大きい単結晶用に装置を改造するか、放射光などの強力X線源を利用することが必要だと考えられる。 今年度はサファイアアンビル部分をダイヤモンドの取り替えてフッ化フラーレン(C_<70>F_x)の高圧下X線その場観察を行った。C_<70>F_xは高圧下で可逆的に非晶質化すること、また、体積弾性率は約26.6(1.8)GPaであることがわかった。体積弾性率はC_<60>(18.1GPa)やC_<70>(25GPa)と同程度である。フッ化フラーレンは分子最外殻がフッ素でおおわれており、分子間相互作用はC_<60>やC_<70>と大きく異なるはずであるのに柔らかさの程度はほぼ同じであるというのは興味深い。この結果についてはSolid State Commun.誌に発表した。
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