研究概要 |
本研究課題では、カルコゲノラート錯体の炭素-カルコゲン結合切断反応を用いた末端カルコゲン配位子の新規合成法の開拓と反応性について、研究計画に従い実験を行い以下の結果を得た。 (1)Cp^*MC13(Cp^*=C5Me5;M=Ti,Zr),Cp^*MC14(M=Ta,Mo,W,Re)とLiStBuの反応からCp^*M(S^tBu)_3(M=Ti,Zr,Mo,Re),Cp^*Ta(S)(S^tBu)_2,Cp^*W(S)_2(S^tBu)を得た。チタン、ジルコニウム錯体では配位子交換反応が起こるのみであったが、モリブデンおよびレニウムでは金属中心の還元反応が起こる。一方、タンタル錯体では金属中心の酸化数はV価のままで炭素-硫黄結合切断が起こるのに対し、タングステンではW(V)からW(VI)への酸化とともに炭素-硫黄結合切断が起こり、末端スルフィド配位子が生成している。 (2)(1)で得られたモレブデン錯体Cp^*Mo(S^tBu)_3を酸化することによりCp^*Mo(S)_2(S^tBu)を、さらにLi_2S_2と反応させることにより[Cp^*Mo(S)_3]-を得た。 (3)(2)でえた[Cp^*Mo(S)_3]-はアルキンと[2+3]環化付加反応をしジチオレン錯体[Cp^*Mo(S)(S_2C_2Ph_2)]-を与える。この反応は錯体およびアルキンに対しそぞれ1次で進行することが明らかになった。タングステン類似体はハロゲン化アルキルと反応しCp^*W(S)_2(SR)を生成するが、モリブデン錯体では分解反応が起こるのみであった。
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