P-H結合をもつ2座のリン配位子MeP(H)CH_2CH_2P(H)Meを出発配位子として、大環状化する方法を検討した。まず、この配位子を2つPd^<2+>またはPt^<2+>に配位させた平面4配位錯体を合成し、次いで、塩基でプロトンをリンから引き抜き、環化試剤であるジハロゲン化アルキルと反応させた。その結果、14員環および16員環の大環状リン配位子をもつ錯体が得られた。14員環では収率が10%程度と低かった。そこで、環化試剤としてシスアルケン(cis-ClCH_2CH=CH-CH_2Cl)を用いて16員環化合物を合成すると収率は50%まで向上した。 合成した錯体のX線構造解析を行った結果、14員環のリンマクロサイクルのホールサイズはPd^<2+>やPt^<2+>のイオン半径よりもやや小さく、そのため錯体形成により環が外側に押し広げられていることが判った。16員環ホスファマクロサイクルでは、そのような歪みは観測されなかった。従って、16員環ホスファマクロサイクルは、これらのイオンを収容するのに適したホールサイズをもっていることが判った。また、16員環化合物では、16員環キレートが、シスおよびトランスに配向した2種の異性体の構造をいずれも決定できた。その結果トランス体では平面4配位構造の中心に位置しているのに対し、シス体では4つのリンのなす平面から0.15Å浮き上がっていることが判った。
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