研究概要 |
分子の透過特性を有する機能性膜に適した性質を有する多孔性配位高分子の構築を行った。従来、多孔性配位高分子の合成は架橋配位子と金属イオンを溶液中で反応させて行う場合が殆どで、合理的にチャンネル構造を組み上げることは事実上、困難であった。そこで、新しい多孔性構造の構築手法として、二次元シートをピラジンなどの架橋配位子で連結する構築方法を確立した。銅(II)イオンとピラジン-2,3-ジカルボン酸(pzdc^<2->)、及び架橋配位子(ピラジン(pyz))を水中で反応させ、目的とする構造を有する[Cu_2(pzdc)_2(pyz)]_nを合成単離することに成功した。単結晶構造解析の結果、この配位高分子は小分子が透過するのに必要な大きさの約4x8Åのチャンネルを有していることが明らかとなった。この配位高分子のチャンネル内には、実際には水分子が取り込まれているが、減圧条件によりこれらの水を取り除いても、チャンネル骨格は壊れずに維持されている事が粉末X線解析から明らかとなった。また、架橋配位子に4,4'-ビピリジン(4,4'-bpy)を用いた場合にも同様の構造を有する多孔性固体が生成することが明らかとなった。これらの配位高分子の骨格構造は真空下100度でも安定に維持されており熱的に安定な多孔性結晶が生成したことか分かった。また、そのチャンネルの大きさもピラジン錯体のものに比べて約2倍大きい、7x8Å程度のチャンネルが形成していることも判明した。得られた多孔性結晶内へのメタンガスの取り込みを検討した結果、ピラジン錯体の3倍のメタンが4,4'-ビピリジン錯体に吸着されることが見いだされ、ゼオライトに匹敵する小分子透過能を有していることが明らかとなった。
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