遷移金属集合体の配列制御によるプロトン-電子連動系の開発

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09740498
• 研究機関: 大阪市立大学
• 研究代表者: 田所 誠 大阪市立大学, 理学部, 講師 (60249951)
• キーワード: クリタルエンジニアリング / ビイミダゾール / 金属錯体 / 分子間水素結合 / 高分子 / 光学異性体 / 構造 / 構造異性体

研究概要

相補的な2点分子間水素結合とキレート型の配位結合部位を同時に有するビイミダゾール配位子を用いて結晶構造中の分子配列を制御することに成功した。この分子は種々の2座キレート配位子と中心金属イオンとしてニッケルイオン、ビイミダゾールを2つ配位したシス型の[Ni(Hbim)2(L)]錯体である。この錯体はビイミダゾールが1つのプロトンを解離した-1価の電荷を持つためニッケルの+2価と相殺される。そのため種々の2座キレート配位子Lとして中性のものを用いた場合、錯体電荷が中性となりカウンターイオンを持ちえないため、ビイミダゾールの相補的な分子間水素結合で配列構造を制御することができるのである。その配列構造は錯体の光学異性体である△型と∧型を交互に水素結合によって連結させた1次元ジグザグリボン構造をもつ。この構造はビピリジン、フェナントロリン、脂肪族ジアミン類などから得られた錯体の12種類のX線構造解析によって明らかにされた。すべての構造に渡ってこの1次元ジグザグリボン構造が維持されており、この一次元鎖が積層した2次元構造あるいは3次元構造は用いた種々の2座キレート配位子の種類によって異なっていた。この1次元ジグザグリボン構造を結晶中の一次元高分子とみなし、配位させる2座キレート配位子を高分子からの置換基とみなすことができる。このキレート配位子の部分に有機ラジカルあるいは光学異性体、光活性物質などを用いて制御された配列結晶を達成すれば機能性分子を一定の間隔で並べることができ新しい機能性物質の創成が可能であると考えられる。すでに我々は光学活性物質の導入に成功した。

研究成果

• [文献書誌] M.Tadokoro et al.: "Design of Organic Structure in the Solid State:Hydrogen Bonded Molecular “Zigzag Ribbon" Built up by cis-Dibiimidazolate Ni(II) Complexes" Molecular Crystals and Liquid Crystals. 306. 391-396 (1997)
• [文献書誌] M.Tadokoro et al.: "One-dimensional Solid State Structures with a New “△△-∧∧" Arrangements of “Crinkled Ribbon" Derived from cis-Dibiimidazolate Ni(II) Complexes" Molecular Crystals and Liquid Crystals. 306. 41-47 (1997)
• [文献書誌] M.Tadokoro et al.: "Preparation of Nanoporous Molecular Based Solid Produced by Tris-2,2'-biimidazolate Co(III) Complexes" Molecular Crystals and Liquid Crystals. 306. 235-239 (1997)
• [文献書誌] M.Tadokoro et al.: "Inclusion Compounds of K+-Crown Ether Derivatives Introduced by Trisbimidazolate Nickel(II)Complex with Large Channel Structures" Molecular Crystals and Liquid Crystals. 306. 385-390 (1997)
• [文献書誌] M.Tadokoro et al.: "Structure and Magnetic Characterization of Binuclesr Nickel(II)Compound with Bridging 2,2'-Bimidazolate Dianion" Molecular Crystals and Liquid Crystals. 306. 49-56 (1997)
• [文献書誌] 田所 誠: "総説「分子性ゼラオライト-有機・無機複合ゼオライトの合成-」" 科学と工業. 71. 434-448 (1997)