研究概要 |
1)二核銅スーパーオキソ錯体の生成:二核構造を安定化するヘキサピリジン配位子を用いてジ-μ-ヒドロキソ二核銅錯体[Cu_2(OH)_2(hexpy)]X_2(X=ClO_4,1a,CF_3SO_3,1b,hexpy=1,2-bis[2-(bis(2-pyridyl)methyl)-6-pyridyl]ethane)を合成した。結晶構造解析の結果から、1aの銅イオンは四角錐型の配位構造を持ち、2つ銅イオンのアピカル窒素原子は互いに同じ方向を向いたsyn型の空間配置をとることが示された。1a,bのCH_2Cl_2溶液を-30℃に冷却してH_2O_2のMeCN溶液を加えると、溶液の色が直ちに青色から緑色に変化した。これをしばらく-30℃に保ちながら撹拌すると、溶液の色は徐々に暗紫色へと変化した。この暗紫色の溶液の電子・ESR-ESIマス・共鳴ラマンスペクトルから、暗紫色の錯体2が二核銅スーパーオキソ錯体であることが証明された。これまでに、二核銅(I,II)錯体とO_2との反応から二核銅スーパーオキソ錯体が生成することは報告されている。しかし、酸化的に二核銅スーパーオキソ錯体が生成したのは今回が初めての例であり、二核銅錯体による二原子酸素の活性化という観点から、重要な発見であると考えられる。 2)室温で安定な二核銅ペルオキソ錯体の合成・構造及び酸素分子の可逆的吸着:6位にメチル基を導入した6-Mehexpy配位子(6-Mehexpy=1,2-bis[2-(bis(6-methyl-2-pyridyl)methyl)-6-pyridyl]ethane)を合成した。これは銅(1)イオンと反応して二核銅(I)錯体[Cu_2(MeCN)_2(6-Mehexpy)]X_2(X=PF_6,3a,BF_4,3b)を与えた。3a or bは、CH_2Cl_2中で、O_2と反応して鮮やかな紫色の二核銅ペルオキソ錯体[Cu_2(0_2)(6-Mehexpy)]X_2(X=PF_6,4a,BF_4,4b)を生じた。3bと4aの結晶構造を明らかにした。4aは、二核化配位子を用いたものでは初めてのμ-η^2:η_2型の架橋モードを持つパーオキソ錯体であり、また、可逆的に酸素分子を吸着するという点でヘモシアニンの機構解明のために有用である。
|