研究概要 |
非ヘム二核鉄酵素であるメタンモノオキシゲナーゼ(MMOと略)は酸素分子を活性化し、不活性な小分子であるメタンを常温常圧でメタノールへ水酸化するという機能を持つ。本研究の目的はMMOの触媒サイクルの中の高原子価中間体(2{Fe(4+)=O},Qと略)を分光学的に直接観測することである。 平成9年度は、Fe(3+)-O-O-Fe(3+)の構造を持つパーオキソモデル錯体(金沢大、鈴木らの錯体を使用)に400-800nmの可視光(キセノンランプを使用)を照射し、Qの観測を試みた。反応の追跡には、瞬間マルチ測光システム用浸漬セル(平成9年度購入の大塚電子製MC-957C2を使用)を低温下(-40℃)で直接反応容器に差し込み、吸収スペクトルの測定を行なった。実験結果は、Fe(3+)-O-O-Fe(3+)結合のうちFe(3+)-Oの位置で開裂が起こり、酸素分子が遊離し、もとの2{Fe(2+)}錯体に戻るというものであった。 平成10年度は、より安定な高原子価中間体Qのモデル錯体を得るため、配位子により電子供与性の強い置換基を導入することを試みる。鉄イオンの電荷密度が増加するとO-O結合の開裂が促進され、鉄イオンの高原子価状態が安定化すると考るからである。また、平成10年度は、Fe(3+)-O-O-Fe(3+)結合をO-Oの位置で選択的に開裂させるレーザー光の波長領域の検討も行なう。
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